こんにちは。はじめちゃんこと、群馬県前橋市の箏曲家、鈴木創です。

私は今、まえばしCITYエフエムの番組に、週に一回エッセイを書かせていただいております。
「はじめのまえばし心の旅」というコーナーで、水曜日の18時から放送されています。

私が書いた文章を、パーソナリティの青柳美保さんが朗読するという形式になっています。

noteというサイトでバックナンバーをアーカイブしておりますが、ブログにも掲載いたします。
ブログでは、背景情報などを付け足してみますね。

昨日6月2日放送は、第9回。テーマは「広瀬川」です。

梅雨に入るこの時期、雨として降った水は川に注ぎ、やがてその流れは海に流れ、また雲になり、雨になります。

そんな水の循環の中で、前橋といったら、やっぱり「広瀬川」は欠かせません。

そんなことから、広瀬川をテーマといたしました。

また、BGMは、赤城山の塩原義昭さんが作曲した、萩原朔太郎の詩「広瀬川」につけた曲を使わせていただきました。
 
ここでは文章を紹介いたしますが、音声データはこちらからお楽しみ下さい。 

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ーーはじめのまえばし心の旅⑨広瀬川ーー

水無月六月、しとしとと降る雨を受け止めるのは、まちなかを流れる広瀬川。たくさんの 花が咲いたかの様なパラソルの色も、しっとりと佇む紫陽花の色も、その流れの前では、水 に彩(いろどり)を添える存在に過ぎない。
 

いつも、まちの入り口には広瀬川がある。東から来れば諏訪橋、北から来れば比刀根橋、 上電を降りれば久留間橋。趣のある名前の橋を渡り、まちなかに入る。


子供の頃、比刀根橋を渡るときは、高欄に空いた穴から川面を眺めた。厩橋からこの辺り の広瀬川は、豊かに滔々(とうとう)と流れる。少し下流の交水堰は、水の力強さを感じる。 そこから下流は、白い小さな波を連れてサラサラと清く流れる。


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しかし、その清流も、天気によって色が一変する。いつもは見る者を引き込む様な深緑だ が、雨が降ると一転、人を拒む茶色い濁流となる。この辺りの天気が良くても、濁流の時は 上流で雨が降っている景色を想像する。


広瀬川の周りには、たくさんの木が生活している。中には、かなりの高さの木もある。子 供の頃は、自転車の後ろの座席から手を伸ばし、柳の葉を触ろうとした。今は、疲れた時、 行き詰まった時、ちょっと息抜きをしたい時、私は広瀬川の大きな木々に囲まれた水辺を歩 く。そして時にふと立ち止まり、水面(みなも)を眺める。すると、「行く川の流れは絶え ずして、しかも本(もと)の水にあらず。・・・」に始まる方丈記の冒頭が頭に浮かぶ。無 常を感じ、小さなことにこだわる自分を戒めてくれる。


ひょっとしたら 100 年前、萩原朔太郎も同じところを歩き、同じ水面を眺め、同じこと を感じたのかもしれない。

広瀬川白く流れたり
時さればみな幻想は消えゆかん。
われの生涯(らいふ)を釣らんとして
過去の日川辺に糸をたれしが
ああかの幸福は遠きにすぎさり
ちひさき魚(うお)は眼にもとまらず


朔太郎にとって、幻想や、糸を垂れて探していたものはなんだったのだろうか。私と同じ、 何かに対するこだわりか、あるいは思い
いたがなかった来か。朔太郎の葉が、

広瀬川の水をして、自分の心の中に流れてくる。そして、私の中のわだかまりが流され、 心のしてくれる。
 

まちなかを流れる広瀬川。まちの中心に豊かな川が流れ、その周りが木々に囲まれてい る。そして手を伸ばば触れられるくらい、水面がい。ここにしかない貴重環境だ。い っそのこと、京都の「哲学」ではないが、川辺のを「文学」としても良いのでは ないか。今行われている、川辺の環境整備にも期待したい。
 

広瀬川、それは、私たちをし、め、受け止めてくれるなる川。 

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