こんにちは。はじめちゃんこと群馬県前橋市の箏曲家、鈴木創です。

今日は、お三味線の楽譜のことをちょっとお話しします。

4月上旬の舞台のお話をいただき、演奏曲目が決まりました。

2曲のうち1曲は私どもで受け継いでいる曲ですので問題なかったのですが、もう一曲について、紆余曲折がありました。

曲名をお伺いすると、生田流にある曲でした。
そして、お箏とお三味線があるのですが、お三味線の指定でしたので、その曲のお三味線の楽譜を取り寄せました。

その後、音源をいただいたら、なんと、まったく曲が違うんです!!

どういうことかというと、山田流に同じ曲名で異なる曲があり、そっちの曲のことだったんですね。

まず、楽器店にその曲のお三味線の楽譜を問い合わせると、「ない」という返事。
お箏の楽譜はあるのですが、お三味線の楽譜の出版社が事業を停止しているために、楽譜がないんですね。

次に、お付き合いのある山田流の方に問い合わせをしたところ、他の方がお持ちの楽譜の写しをいただることになりました。今日になり、その写しが手に入りました。

山田流で使っているお三味線の楽譜は横書きです。
多く目にするのは、「文化譜」と呼ばれている楽譜です。

一方、私どものお三味線の楽譜は縦書きで、「家庭譜」「縦譜」などと呼ばれています。
「家庭譜」という名前は、「大日本家庭音楽会」という会社から発行されているのに因んだ名前です。

「文化譜」と「縦譜」は、どちらも左手で押さえる所(「ツボ」と呼びます)を楽譜に記している「タブ譜」なのですが、数字がひとつずつずれています。「文化譜」は開放絃が0で、そこから高くなるにしたがって1、2、と数字が増えていくのですが、「縦譜」は開放絃が1になっています。

ですので、「文化譜」から「縦譜」に変換するときは、基本的には1ずつ数字を足していけばいいんですね。

今日もそのつもりで、いただいた楽譜を縦譜に変換していたのですが、どうもおかしいのです。変換した楽譜を見ても、メロディが見えないんです、、、

そこで「あ!!」となったのですが、いただいた楽譜が「文化譜」ではなく、「研精会譜」「小十郎譜」と呼ばれている譜なんです。

この譜は、タブ譜ではなく、ドレミを数字で表しているんですね。
ド(C)が1で始まり、シ(B)が7です。

上下三段になっていて、下の段から上に向かって、一の糸・ニの糸・三の糸で、それぞれの糸でどの音を出すかを、数字で表しています。
例えば、真ん中の段に5と書いてあれば、「ニの糸で、ソの音を出す」という意味なんです。

なので、タブ譜に慣れている私は、この譜を見ても、左手がどこを押さえていいのかわかりません。

おまけに、私どもはお三味線の「本調子」を低い一の糸から「DGD」とするのですが、研精会譜は「BEB」なんです。

ですので、研精会譜で「三の糸の1の音(C)」と書いてある場合は、「BEB」の調子で押さえるツボを考えるという作業が必要になります。

さらに、途中で「二上がり」という、二の糸が一音上がった調子に変わるので、同じ音が書いてあっても、押さえるツボが変わります。

そんなこんなで、「曲が違う」「楽譜がない」「見つかった楽譜が研精会譜だった」という、3つの問題を解決し、かつ、なんとか、お三味線の変換作業が終了し、先ほど確認を終えました。

次は、歌で同じことをしなければなりません、、、