こんにちは。はじめちゃんこと群馬県前橋市の箏曲家、鈴木創です。

今日は高崎芸術劇場で行われた能を見てきました。

演目は、道成寺

地歌にも「新娘道成寺」という似て非なる曲があるのですが、それを聴きながら高崎に向かいました。

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シテを務めるのは、高崎市出身の能楽師下平克宏さんです。

道成寺は、私がかねてからとても見たかった演目。
ご案内をいただき、すぐに申し込みました。

今回の道成寺は、群馬県で初の上演とのことです。
というのも、能舞台に鐘を釣る滑車や紐を結ぶ丸環がないと上演できず、群馬県にはそれらの設備を備えた能舞台がなかったのだそうです。

高崎芸術劇場にそういった条件が整った能舞台ができたからこそ、今回の上演が可能になりました。(写真に赤い丸をつけておきました。)

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感想ですが、圧巻でした!
終わった時に、口から自然と「はーっ」と息が出たくらい引き込まれました。

特に、小鼓の激しい気合の入った掛け声と打つ音、その中での白拍子の空白の長い動き。クライマックスシーンにむかって緊張感が高まります。

そして、鐘が落ち、白拍子が鐘に飛び込む最大の見せ場は、会場全体が、言葉は出ないけど静かな興奮状態になりました。

その後、僧侶の祈りにより鐘が上がり、白蛇に変身したシテが顔を上げた瞬間の空気感は、会場にいた全員に、強い印象を与えたでしょう。

込み入ったシーンや激しい動きはごく一部なのですが、どのシーンもすごく印象に残りました。

道成寺は、能楽師にとって、生涯に一度勤められるかどうかという大きい演目とのことです。

それだけの大舞台であることを物語る様に、いつもより人数の多い地謡の皆さんは裃を付け、笛や太鼓のみなさんも長袴に裃です。後見の人数も多く、ものすごい人の力が結集された舞台であることが伝わってきます。

そして、私はやはり、何がこんなに私を惹きつけるのか、何が舞台に人々を集中させるのか、終演後、それを考えながら前橋に戻ってきました。

素晴らしい舞台、堪能いたしました。