みなさんこんにちは。群馬県前橋市の 箏曲家 鈴木創 です。

ここしばらくは、落ち着いた日々を過ごしておりますが、何をやっているかというと、
・来年の企画に関する打ち合わせ等
・演奏曲の暗譜
・五線譜の曲の箏譜への変換
など、今後の活動への準備を行っています。 

今回紹介させていただくのが、「五線譜の曲の箏譜への変換」です。

お箏は13本の絃があり、糸を支える「柱」を動かすことによって、絃の音を変えることができます。
そして、13本の絃の音には組み合わせのパターンがいくつもあり、「調子」と呼んでいます。例えば、「平調子」「雲井調子」などの名前がついています。

五線譜の曲を演奏するときに、それら既存の調子や、そのちょっとしたバリエーションの中で演奏できればいいのですが、なかなかそうはいきません。

「柱」を動かすことで音が変えられることは、柔軟性があるとも言えますが、音と絃の関係が一つに決まっていないので、「五線譜を見ても、どの絃をひいたらいいのか、そのままわかるのではない」んです。 

ですから、五線譜の曲を弾く時は、五線譜の音符に、弾く糸を割り振って行きます。
私はこの作業を、「糸振り」と呼んでいます。

 今回は糸振りの手順を紹介いたします。

1:五線譜のそれぞれの音符が何回使われるか、カウントします。

これがその実例です。
 16

汚い字で申し訳有りません、、、、

縦に音名(CDEFGAB)を書き、その右にその音が何回使われているか、正の字を書いて数えていきます。 

この実例の場合は、低音部(五線譜のヘ音記号の部分)をやり直したので、下の方を線で消し、右にやりなおしています。

2:調子を決める

数を数えたら、お箏のチューニングを決めて行きます。

本当は一つの音に対して一本の絃が当てはめられればいいのですが、13本の絃で賄わなければならないので、 そうも行きません。

ただ、「押し手(左手で絃の柱より左を押すことによって音を上げる)」を使うことによって、一音までは上げることができます。 
また、「柱」を動かすことによって、絃の音を変えることもできます。これを「転調」と呼んでいます。

こういった手法を使うことによって、一本の絃でいくつかの音を出すことができます。
でも、低い絃(自分から遠い絃)は大変なので、なるべく自分に近い絃で「押し手」などを使う様に考えます。

それらのことを検討し、13本の糸それぞれに割り当てる音を決めます。
そうやって決まった音が、上の写真の右下に書いてあります。
拡大したのがこれです。
55

一から巾の13本の糸に、音名が振られています。
(一が低い音で自分から遠く、巾が高い音で自分に近い糸)
矢印で他の音名が書いてあるのは、曲の中で「転調」する糸です。

3:五線譜に糸の名前を振る

ここまで来たら、五線譜の音符ひとつひとつに、お箏の糸を割り当てて行きます。
こんな感じです。

43

 アルファベットの音名の上に、お箏の絃の名前が記載されています。
十の左側にヲと書いてあるのは、「押し手」を使って半音上げる、という意味です。

4:調整

ここまでの作業は、あくまでの「理論上」の作業なんです。
「3」の段階までで決めた糸を、実際に弾いてみます。
そうすると、演奏不可能であったり、不自然な手の動きなどの箇所があります。
そいうった部分を修正してみたり、左手を使って見たり、またお箏で演奏するので、それらしい演奏方法を採用してみたり、そういった調整をし、「曲」にしていきます。

5:清書
 
調整が終わったら、あらためて楽譜を清書します。 
この段階で、一応「糸振り」は終了します。

しかし、ここから練習して曲を体にしみこませ、
そのうちさらに変更しなければならない部分なども出て来ます。
その後、共演者との練習などを経て、本番に向かいます。


えーっと、この「糸振り」作業、けっこう、というか、かなり大変です、、、、

もっと効率的な方法があったら教えて下さい!
ぼちぼちいいアプリとか出て来ないかな。