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箏曲家 鈴木創 公式ブログ「ことはじめ」

群馬県前橋市を拠点に活動する箏曲家鈴木創の公式ブログ「ことはじめ」です。

紅木

27 2月

お三味線の素材の危機的状況

みなさんこんにちは。
はじめちゃんこと、群馬県前橋市の 箏曲家 鈴木創 です。

ここ数日は、お三味線のことについてお話しをさせていただきました。
今日は、お三味線のそれぞれの素材の現状についてお話しをさせていただきます。 

撥や糸巻きの素材である象牙
象牙は、ワシントン条約の対象になっており、新規の輸入等が難しい状況です。
かつ、撥に使う象牙は、一般的に出回っている「ソフト材」ではなく、「ハード材」と呼ばれる数が少ない材料です。
代替えの素材が研究されておりますが、現代の技術をもってしても、なかなか象牙に変わる素材は生まれておりません。

棹の材料である紅木
日本よりも需要が多い中国に多くが行ってしまい、日本に入ってくる紅木を確保することが難しい状況です。

胴の周りに張る皮
皮は主に猫や犬の皮を使っています。日本国内の皮はほとんど使っておりません。以前はタイから輸入しておりましたが、タイの政情が不安定のために、以前ほど安定的に皮が日本に入ってきません。

撥や駒に使う鼈甲
ワシントン条約の対象となってしまい、新たな素材の確保が難しい状況です。

このように、ほとんどの材料が、現在は新たな入手が難しい状況になっております。
材料の入手が難しいから値段が上がる。値段が上がるから買い手が減る。という悪い流れができつつあります。
新たに楽器を手にしてくれる人がいなければ、楽器を作る職人も育ちません。

解決策としては、
1:日本の伝統を守る目的として、一定程度の素材の輸入を可能にすること。
2:現代の技術により、代替え素材の開発が進むこと。ただし、投資に見合う売上がなければ開発が進まないので、ある程度の需要が必要です。
3:需要が増えること。すなわちお三味線の愛好家が増えること。

私が直接できることは、特に「3」です。
日本の音の気持ちよさを伝え、愛好家を増やすこと。

少しでもご興味がある方は、お気軽にお問い合わせ下さい。
楽器は、中古楽器なども予算に応じて準備可能です!

 
22 2月

お三味線の棹と糸について

みなさんこんにちは。
はじめちゃんこと、群馬県前橋市の 箏曲家 鈴木創 です。

昨日は、お三味線の歴史や分類についてお話しをさせていただきました。

今日は、もう少し掘り下げて、棹や糸などのことをお話しさせていただきます。
ただ、このお話しは私共が使っている「地歌」のお三味線のこととなります。

因みに、地歌の世界では、お三味線のことを「三絃」と呼ぶことが多いです。

下の写真をご覧下さい。
57

まずは、この「棹」について。
棹の素材は、花梨か紅木です。
花梨がちょっとお安めの楽器で、紅木が良い楽器です。

紅木は、お三味線以外にもお箏でも使われたり、中国の家具などにも使われています。
とても重くて堅い木で、水に沈みます。
ですから、環境の変化を受けにくく、楽器として安定するので、三味線に適しているのだと考えられています。

しかし、「紅木」、日本では生息していない木なんですね。
インドなどで生息している木なんです。
 
どうしてこの木が日本に入ってきたかというと、アジアから日本に来る貿易船が、積み荷が少ないときに、海上で危険なので、重りの役割として紅木を使っていたのではないか、という説があります。
日本で輸出する荷物を積み込むと、重りは必要ないので、紅木を船から下ろし、その木を楽器に使ったのではないでしょうか。

因みに紅木は、いま中国での家具や彫刻を彫った衝立などの使用量が圧倒的に多いです。
日本ではお三味線やお箏などで使っているくらいので、使用量が少ないんですね。やはり商人たちは需要のある中国に輸出してしまうために、お三味線などにつかう材料の入手が難しくなっています。

次に糸のことです。

上の写真を見てもおわかりいただけますが、黄色い糸です。
素材は絹。

太さが何種類もあり、私共は「14」という規格の糸を使っています。
何本もの細い糸を撚って、一本の糸にしています。

黄色い色がついているのはウコンで、防虫のためと言われています。

絹糸ですので、湿気などに弱く、私はお稽古場では桐の箱に入れ、持ち歩く糸はジップロックに入れています。
また、購入した日付を袋に書いておき、古い糸から順番につかい、本番の時には新しい糸を使うようにしています。

一番細い三の糸はしばし切れるので、消耗品ですね。
太い一と二の糸は、定期的に交換し、さらに本番の前でも交換しています。

最近は、テトロンやナイロンの糸も出ています。
丈夫で切れにくいですが、触った感触が絹糸と異なり、音も絹糸には及ばないので、やはりお稽古用などのみの用途となります。

思ったよりも長くなってしまいました。
引き続き、お三味線のことをまたお話しさせていただきます。 
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